脂肪肝とNASHについて


脂肪肝とは

肝細胞の中に中性脂肪がたくさん蓄積された状態が脂肪肝です。 最近、食事の欧米化とともに脂肪摂取量が増加し、過食の習慣、運動不足が加わって脂肪肝が非常に増えています。非常に若い方にも脂肪肝はまん延しており社会問題になってきています。

脂肪肝の原因

肥満とアルコールが大半を占めています。脂肪だけでなく糖分やアルコールなど過食による余剰エネルギーは中性脂肪に変換されて肝臓に蓄積します。その他、内分泌異常やステロイド剤などの薬剤が原因となっている脂肪肝も時々経験されます。

脂肪肝の性格

非アルコール性の脂肪肝自体は一般には比較的良性である疾患ですが、内臓肥満であり高脂血症、糖尿病、高血圧を合併する可能性が高く、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などを起こす原因になります。
一方、アルコール性脂肪肝の場合はしばしば慢性肝炎から肝硬変症に進行します。

脂肪肝の診断

一般に脂肪肝に特徴的な症状はなく、検診の血液検査や超音波検査などが診断のきっかけになります。
血液検査ではコリンエステラーゼ、AST、ALTの上昇とともに中性脂肪が上昇している事が多く、アルコール性の場合にはγ-GTPも高値になります。
超音波検査では肝臓の実質エコーが高エコー(白く光る)になり、超音波の減衰や肝内の脈管構造が不明瞭となり肝腎コントラスト強くなる(腎に比べ肝が白くなる)ことが主な所見です。しかし超音波検査は腹壁の厚さなどにも左右され脂肪肝の確定診断が困難なこともあります。それに対してCT検査では肝臓のCT値を測定することにより脂肪肝のより正確な評価が可能です。

NASHについて

最近の新しい肝疾患の概念にNASH(ナッシュ)という疾患があります。NASHはNon-Alcoholic Steatohepatitisの略語であり、非アルコール性脂肪肝炎と訳されています。最近まで非アルコール性脂肪肝は予後良好であり肝硬変には移行しない疾患と考えられてきましたが、NASHという疾患概念により、安心できない状態である事がわかってきました。
NASHはアルコール多飲に起因せず、肥満、糖尿病、高脂血症などいわゆる生活習慣病が原因の脂肪肝に炎症を伴う疾患です。長期的には肝硬変に移行し肝細胞癌が発症することもあります。今後メタボリック症候群の増加とともに増加することが予想されます。血液検査や画像診断だけで通常の脂肪肝とNASHを鑑別することは難しく、診断を確定するためには肝生検が必要とされています。確実な治療法はありませんが、
食事,運動療法により原因となる肥満や糖尿病を改善すると,NASHの進展を軽減する可能性があります.また薬剤としてはインスリン抵抗性改善剤、フィブラート系製剤,抗酸化薬(ビタミンE,C),ウルソデオキシコール酸などの有効性が考えられています。

最後に

肥満、糖尿病、高脂血症に加えて肝障害のある方で、特に過食習慣、慢性的運動不足を自覚している方はNASHの可能性もあります。脂肪肝だと安易に考えないで少なくとも生活習慣の是正に努めるようにしてください。