大腸ポリープ内視鏡的治療について


大腸ポリープとは

大腸ポリープは簡単に言えば大腸の粘膜面(大腸の内側を被っている膜)にできたイボです。したがって大腸カメラで大腸の内部を覗けばイボは発見できます。大腸ポリープは大きく分けて腺腫性ポリープ過形成性ポリープ炎症性ポリープがあり、癌化の可能性のあるポリープは腺腫性ポリープです。基本的には腺腫性ポリープと思われるポリープはポリペクトミーの対象となります。腺腫性ポリープの全てが癌に進行するわけではありませんが、どの腺腫性ポリープが将来癌化してくるかという答えはありません。5mm以下で表面が滑らかで凹凸がないポリープであれば急いで取る必要はありません。一般的には大きな腺腫性ポリープであればある程すでに癌が潜んでいる確率は高くなります。しかし小さなポリープだからといって絶対に癌が潜んでいないとは言えません。

ポリープを取る方法

ポリープの付け根にスネアという輪になった細いワイヤーをひっかけて絞った後に電気を通して熱を発生させ、ポリープを栄養している血管を焼きながら切除します。この手技をポリペクトミーと言います。患者さんにはポリープを取るときは一緒にモニターを見てもらっています。粘膜面には知覚神経はありませんから熱くも痛くもありません。切除したポリープは原則すべて回収して病理組織学的検査に提出します。当クリニックではポリープを切除する場合はポリープの下に生理食塩水を注入してポリープを持ち上げポリペクトミーを行っています。このような方法で行うと平らな病変も切除(内視鏡的粘膜切除術:EMR)できるだけでなく、焼きすぎて穴を開ける合併症も減らすことができます。

ポリペクトミーの合併症

合併症を早期に診断するため入院して行う施設もあります。合併症には術後出血と穿孔の2大合併症があります。当クリニックでは術後出血を予防するためクリップという金属を用いて切除部位を閉じています。これは1カ所に1本から多いと4本くらいつけることもあります。クリップは自然に脱落しますから心配はいりません。クリップをつけることにより出血の可能性は非常に少なくなりますが、当クリニックでは術後出血の防止のため当日は水、茶、スポーツドリンクのみにしていただき、翌日も腸管を刺激しない特別食を食べていただきます。大きなポリープを取った場合は2日間特別食をとっていただくこともあります。開業して8年間に約930人の方のポリペクトミーを行いましたが14人(約1.5%)の方に後日下血が起こりました。再度クリニックにきていただき、ほとんどの方は再度大腸カメラ下にクリップを追加して止血しました。もう一つの合併症は穿孔です。これは大腸壁の深部にまで熱が伝わって穴が開く合併症です。大きなポリープを切除した場合にあり得る事ですが、私自身はこれまで明らかな穿孔を起こした経験はありません。この場合は通電中に痛みを伴いますから予想がつきます。穿孔の可能性が疑われる場合は数本のクリップをつけて穴をふさいだ上で関連病院に入院していただきます。軽い限局性腹膜炎を発症しますが摂食さえしなければ、抗生剤点滴をふくめた内科的治療でほとんどが治癒します。

術後の注意事項

ポリープを取った場合は約1週間は食事に気をつけてもらい、運動は避けていただきます。前記しましたように当日は水分のみ、翌日は特別食を、翌々日から家の食事を食べていただきますが、1週間はごぼうなどの硬い食物繊維や刺激物をさけて消化の良い物を摂食していただきます。アルコールは術後出血の大きな原因になりますので1週間は避けていただきます。特に腹痛、発熱、明らかな下血など異常がある場合は食べないで連絡していただきます。食べてさえみえなければすぐに大腸カメラを再検して処置を追加することが可能だからです。

摘出ポリープの病理組織学的検査

ポリープを取った場合、約1週間後に病理医(顕微鏡で取った組織を判断する専門医)より顕微鏡で調べた結果が報告されます。腺腫性ポリープのみで癌の合併を認めなければ完治です。しかし腺腫のなかに一部癌が合併している事があります。その場合ポリープの表層だけに癌が認められるのみであれば完治と考えます。ときに表層だけでなくポリープの奥にまで癌が認められることがあります。この場合は癌の認められる深さ(深達度)や組織型や脈管(血管やリンパ管のことです)に癌が入っているかどうかなどを指標にして完治かどうかを判定します。進行してまわりのリンパ節に転移している可能性が高いと判断した場合はさらに手術の追加をお勧めいたします。この判断はとても難しい場合もあり、私だけの判断でなく病理医などとも相談して判断します。いずれにしても癌を合併していた場合は完治と判断しても3ヶ月〜6ヶ月後に大腸カメラを再検して病巣部位に癌が残っていないかを調べさせていただきます。